この記事で分かること(3行サマリ)
- 東京科学大学(旧東京工業大学・理工学系)の総合型選抜は6学院すべてで実施され、募集は一般枠86人+女子枠139人の計225人。評定平均の基準はありません。
- 合否を分けるのは共通テスト(6教科8科目)による第1段階選抜。志願倍率は最大約8倍でも、面接に進めば実質倍率は1.0〜3.1倍です(2026年度確定値)。
- 2027年度の出願は2026年12月14日〜16日。合格したら入学確約(辞退不可)ですが、不合格なら一般選抜(前期)をそのまま受験できます。
「東京科学大学の総合型選抜って、結局どんな入試なの?」——旧東工大の看板が変わり、女子枠の話題も相まって、制度が複雑に見えるという相談を多くいただきます。
結論から言うと、この入試は「書類と面接で決まるAO入試」ではなく、共通テストの得点力を土台にした学力型の選抜です。この記事では、2026年7月7日に公表されたばかりの令和9(2027)年度学生募集要項(公式PDF)と、大学が公表する確定の入試実施結果だけを根拠に、日程・仕組み・倍率・対策の要点を整理します。
私たちイエナアカデミーは、難関大受験の個別指導を行う学習塾です。要項の原文を読み込んだうえで、指導現場の視点も交えてお伝えします。
結論:東京科学大学 総合型選抜の全体像
まず制度の骨格です。東京科学大学は旧東京工業大学(理工学系)と旧東京医科歯科大学(医歯学系)が統合した大学で、旧東工大にあたる理工学系の6学院すべてが総合型選抜を実施しています。
2027年度(令和9年度)の募集人員は次のとおりです。
| 学院 | 一般枠 | 女子枠 |
|---|---|---|
| 理学院 | 8人 | 15人 |
| 工学院 | 17人 | 70人 |
| 物質理工学院 | 20人 | 25人 |
| 情報理工学院 | 6人 | 20人 |
| 生命理工学院 | 15人 | ―(学校推薦型選抜に女子枠あり) |
| 環境・社会理工学院A(建築学系) | 8人 | 3人 |
| 環境・社会理工学院B(土木・環境工学系) | 6人 | 3人 |
| 環境・社会理工学院C(融合理工学系) | 6人 | 3人 |
| 合計 | 86人 | 139人 |
出典:令和9年度 東京科学大学 総合型選抜 学生募集要項(2026年7月7日公表)
ポイントは3つです。
- 女子枠が139人と一般枠より多いこと。特に工学院は女子枠70人で、一般枠17人の4倍超です(女子枠の詳細は別記事で解説します)。
- 学校推薦型選抜(生命理工学院のみ・一般枠15人+女子枠15人)と合わせると、年内入試の合計は255人。一般選抜(前期)の募集人員813人(2026年度実績)と比べて、入口の約4分の1を占めます。
- 選考の結果、合格者が募集人員に満たない場合、欠員は一般選抜(前期)に上乗せされます。実際に毎年発生しています(後述)。
2027年度の日程——出願は共通テストの「前」
2027年度入試の日程は次のとおりです。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| Web出願登録開始 | 2026年12月11日(金)9:00 |
| 出願期間(書類必着) | 2026年12月14日(月)〜16日(水) |
| 大学入学共通テスト | 2027年1月中旬 |
| 第1段階選抜 合格発表 | 2027年2月3日(水)18:15頃 |
| 第2段階選抜(個別テスト) | 2027年2月7日(日)・大岡山キャンパス |
| 最終合格発表 | 2027年2月9日(火)12:00頃 |
| 入学手続締切 | 2027年2月17日(水)15時 |
ここで最大の注意点は、出願が共通テストより前だということです。共通テストの自己採点を見てから出願するかどうかを決めることはできません。しかも出願後の志望学院・募集枠の変更は不可。つまり「12月中旬までに、共テでどこまで得点できる見込みかを自分で判断して腹を決める」必要があります。ここが戦略上いちばん重いポイントです。
検定料は17,000円。第1段階選抜で不合格になった場合は13,000円が返還されます。
出願資格とルール——評定は不要、でも「専願」
評定平均の基準はない
出願にあたって評定平均などの成績基準はありません。志望理由書(800字以内)と調査書が全員必須で、一部の学院・枠のみ活動実績報告書が必要です(理学院一般枠・情報理工学院・環境・社会理工学院の女子枠)。逆に言うと、工学院や物質理工学院などは特別な活動実績がなくても出願できる設計です。
浪人生も出願できる
出願資格は「高等学校を卒業した者及び卒業見込みの者」等なので、既卒者(浪人生)も出願可能です。なお生命理工学院の学校推薦型選抜は「2027年3月卒業見込みの者」=現役のみなので、混同しないようにしてください。
合格したら入学確約(辞退不可)
要項には「合格した場合には必ず入学することを確約できる者」と明記されており、合格後の入学辞退は原則できません。さらに、合格すると本学の一般選抜は受験できず(納付済み検定料のうち13,000円は返還)、他の国公立大学の一般選抜を受験しても合格の対象にならないと定められています。
一方で、出願段階では一般選抜との併願が前提の制度です。総合型選抜に不合格だった場合、本学や他大学の一般選抜(前期)をそのまま受験できます。第2段階選抜の合格発表が2月9日なので、前期試験(2月25日〜)までの切り替えも可能です。
枠・学院の掛け持ちルール
- 出願できるのは1学院のみ。総合型選抜と学校推薦型選抜の併願も不可。
- 一般枠と女子枠の併願は環境・社会理工学院のみ可(理・工・物質理工・情報理工は不可)。両枠に合格した場合は女子枠での合格になります。
選抜の仕組み——第1段階(共テ)が本当の関門
第1段階選抜:共通テスト6教科8科目
志願者全員が、大学の指定する共通テスト6教科8科目(国語/地歴公民1/数学2/理科2/外国語/情報Ⅰ)を受験する必要があります。第1段階選抜の配点は次のとおりです。
| 学院 | 一般枠 | 女子枠 |
|---|---|---|
| 理学院 | 1000点(均等型) | 1000点 ※理科は物理・化学指定 |
| 工学院 | 1300点(数300・理300・外300)※理科に物理必須 | 1000点 |
| 物質理工学院 | 1000点 | 1200点(理300・外300) |
| 情報理工学院 | 1000点 | 1000点 |
| 生命理工学院 | 1000点 | ― |
| 環境・社会理工学院 | 1000点 | 1000点 |
第1段階の通過基準は学院ごとに異なります。要点だけ示すと——
- 工学院・物質理工学院:志願者が募集人員の約1.5倍(物質理工は約1.5〜2倍)を超えた場合に共テ得点で選抜
- 情報理工学院:共テ「概ね780点/1000点以上」が基準と要項に明記。加えて活動実績報告書を重視
- 理学院(一般枠):共テ+書類で約1.5倍まで絞り込み。活動実績報告書を重視
- 環境・社会理工学院:共テ(+書類)で約2倍まで
つまり、志願者が多い学院では共通テストで8割前後を取れないと面接に進めない構造です。一般選抜でいう「足切り」に相当する関門が、総合型選抜では共通テストの得点そのもので行われる、と理解してください。「総合型だから学力は二の次」という入試ではありません。
第2段階選抜:学院ごとの「総合問題」
第1段階通過者は、2027年2月7日(日)に大岡山キャンパスで個別テスト(総合問題)を受けます。内容は学院でかなり違います。
| 学院 | 第2段階の内容 |
|---|---|
| 理学院(一般枠) | 面接のみ(活動実績報告書に基づく質疑応答) |
| 理学院(女子枠) | 数学筆記(数Ⅲ範囲・30点)+共テ物理・化学の換算+面接 |
| 工学院 | 面接——物理や数学(数Ⅲを含む)のテーマを論理的に説明 |
| 物質理工学院 | 面接(科学的な知識・考え方の試問)+共テ得点を合算 |
| 情報理工学院 | 面接(活動実績報告書の発表・質疑) |
| 生命理工学院(一般枠) | 生物の筆記試験90分+面接(共テ得点の換算を合算) |
| 環境・社会理工学院A | 造形課題120分(数Ⅲ程度の数学を応用した建築形態の造形・スケッチ) |
| 環境・社会理工学院B | 面接(筆記含む・社会や環境の公共的課題) |
| 環境・社会理工学院C | 面接(グローバルな課題への見解を発表・質疑) |
注目すべきは工学院の面接です。要項に「与えられた物理や数学(数学Ⅲを含む)のテーマに関して、論理的かつ明快に説明する能力を評価する」とあり、実態は数理の口頭試問です。志望動機を語る練習だけでは対応できず、数Ⅲまでの内容を「口頭で説明できる」レベルの理解が求められます。
倍率データ——「見かけ8倍、実質1.5倍」のからくり
大学が公表した確定値から、直近2年の結果を見てみましょう(志願倍率→実質倍率、カッコ内は最終合格者数)。
| 学院・枠(募集人員) | 2025年度(R7) | 2026年度(R8) |
|---|---|---|
| 理学院・一般(8) | 3.4倍→1.5倍(8人) | 2.0倍→1.3倍(8人) |
| 工学院・一般(17) | 10.4倍→1.4倍(19人) | 7.9倍→1.4倍(18人) |
| 工学院・女子(70) | 3.7倍→1.5倍(69人) | 3.5倍→1.5倍(70人) |
| 物質理工・一般(20) | 7.3倍→2.0倍(20人) | 2.2倍→1.4倍(20人) |
| 情報理工・一般(6) | 6.3倍→1.7倍(6人) | 5.0倍→1.5倍(6人) |
| 情報理工・女子(20) | 1.0倍→1.0倍(8人) | 1.6倍→1.0倍(18人) |
| 生命理工・一般(15) | 3.3倍→2.2倍(13人) | 1.8倍→2.4倍(10人) |
| 環境・社会理工・一般(20) | 7.4倍→2.6倍(20人) | 6.6倍→3.1倍(17人) |
| 総合型 全体(225) | 5.0倍→合格209人 | 4.0倍→合格218人 |
出典:東京科学大学「令和7年度・令和8年度 学士課程(理工学系)入学者選抜実施結果」
この表から読み取れることが3つあります。
1. 志願倍率と実質倍率の乖離が大きい。工学院一般枠は志願約8〜10倍ですが、第1段階(共テ)で27人前後まで絞られるため、面接まで進めば実質1.4倍です。勝負は共通テストで決まっている、というのが実態です。 2. 毎年どこかで「定員割れ」が起きています。情報理工の女子枠(2025年度は募集20人に合格8人)、生命理工一般枠(2026年度は募集15人に合格10人)など。大学は「期待する水準に達しなければ枠が空いていても合格を出さない」運用を明言しており、実際にそのとおり運用されています。 3. 裏を返せば、共テの基準を超えて面接に進めた受験生にとっては、かなり現実的な倍率になります。
私見ですが、この入試は「共通テスト型の実力者にとって、一般選抜の前にもう一回チャンスが増える制度」と捉えるのが最も正確だと考えています。
対策の要点——何をいつまでに仕上げるか
指導現場の視点から、対策の優先順位を3つに絞ります。
1. 共通テスト6教科8科目で8割前後——第1段階の通過がすべての前提です。情報理工の「概ね780点」が一つのベンチマークになります。理系生が後回しにしがちな国語・地歴・情報を捨てられません。 2. 数Ⅲまでの先取りと「口頭で説明する」練習——工学院・理学院女子枠・環境A(造形課題)は数Ⅲが前提。解けるだけでなく、考え方を言語化する練習が必要です。 3. 志望理由書800字は「なぜこの学院か」の解像度——成績基準がない分、志望理由書と面接での一貫性が見られます。活動実績報告書が必要な学院(理・情報理工など)は、実績を1つに絞って深く書く指定である点にも注意してください。
よくある質問(FAQ)
評定平均はどのくらい必要ですか?
出願基準としての評定平均は設定されていません。学力は共通テストと第2段階選抜で評価されます(調査書は提出します)。
落ちたら一般選抜(前期)は受けられますか?
受けられます。総合型選抜の出願者は本学・他大学の一般選抜に出願でき、不合格なら通常どおり受験可能です。ただし合格した場合は入学確約で、本学一般選抜の受験も他国公立の合格対象になることもできなくなります。
浪人生でも出願できますか?
総合型選抜は既卒者も出願できます。生命理工学院の学校推薦型選抜のみ現役(卒業見込み)限定です。
共通テストは何点必要ですか?
情報理工学院は要項に「概ね780点/1000点以上」と明記されています。他学院は明示されていませんが、第1段階選抜が共テ得点で行われるため、目安として8割前後の得点力が現実的なラインと考えられます(この段落の水準感は要項の記載と実施結果からの推定です)。
女子枠と一般枠は両方出せますか?
環境・社会理工学院のみ併願できます。理学院・工学院・物質理工学院・情報理工学院は、どちらか一方を選んで出願します。
面接では何を聞かれますか?
学院によります。工学院は「物理や数学(数Ⅲ含む)のテーマの説明」と要項に明記されており、口頭試問に近い形式です。理学院・情報理工学院は活動実績報告書に基づく質疑が中心です。
まとめ:この入試は「共テ実力者の追加チャンス」
- 東京科学大学(理工学系)の総合型選抜は6学院・計225人。評定不要・浪人可・ただし合格したら入学確約。
- 合否の実質的な関門は共通テスト6教科8科目。第1段階を通過すれば実質倍率は1.0〜3.1倍。
- 2027年度の出願は2026年12月14日〜16日。共テ本番前に出願を決める必要があるため、秋までに共テの完成度を高められるかが分かれ目です。
制度は毎年変わります。出願前に必ず大学公式の最新募集要項を確認してください(この記事は令和9年度要項・2026年7月7日公表版に基づいています)。
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データの出典と注記
本記事の制度情報は東京科学大学「令和9年度 総合型選抜学生募集要項」(2026年7月7日公表)、倍率データは同大学公表の「令和7年度・令和8年度 学士課程(理工学系)入学者選抜実施結果」に基づきます。出願にあたっては必ず大学公式の受験生サイトで最新の要項を確認してください。
