「スクリプトを見れば全部わかるのに、音になると何も聞き取れない」——リスニングでつまずく人のほとんどが、この状態にいます。そして多くの人がここで「自分は耳が悪い」「センスがない」と結論を出してしまいます。
それは誤解です。原因は才能ではなく、英語が話されるときに音が規則的に変形すること、そしてその規則を習っていないことにあります。そして重要なのは、その変形パターンは10種類しかないということです。10個覚えれば、聞こえ方は変わります。
なぜ「読めるのに聞こえない」のか|原因は3つに分かれる
聞き取れない原因は、次の3つのどれかに必ず当てはまります。自分がどれなのかを先に切り分けてください。対処法がまったく違います。
| 原因 | 症状の特徴 | 対処 |
|---|---|---|
| ①音の知識が無い | スクリプトを見れば100%わかる。音だと全滅 | 音声変化のルールを覚える(本記事) |
| ②語彙・文法が不足 | スクリプトを見てもわからない箇所がある | 単語帳と文法書に戻る |
| ③処理速度が足りない | 1文ずつなら分かるが、話が進むと置いていかれる | 音読・シャドーイングで自動化する |
「スクリプトなら読める」人は①です。そしてこれが最も多く、最も短期間で解決します。②③と違って暗記量も演習量も要りません。ルールを知るだけだからです。
大原則|英語は「母音の数」で聞く
個別のルールに入る前に、絶対に外せない大原則があります。日本語と英語では、1つの単語に含まれる母音の数がまったく違うということです。
たとえば milk。日本語の「ミルク」はミ・ル・ク=母音3つです。しかし英語の milk は母音1つ、つまり1拍で発音されます。カタカナで3拍だと思って待ち構えていると、1拍で通り過ぎるので聞き逃します。
音節の数=母音の数=手拍子の数です。単語を覚えるときに「何拍で言う単語か」を意識するだけで、聞こえ方が変わります。strike は1拍、chocolate は英語では3拍ではなく2拍で発音されることが多い、といった具合です。
音声変化は10種類しかない|早見表
ここが本題です。英語の音が「消えたり・つながったり・変わったり・縮んだり」する現象は、次の10種類に必ず収まります。名前をつけて覚えることが目的です。名前がついていない現象は、認識できないからです。
| # | 名前 | 何が起きるか | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 連結(リンキング) | 子音の終わりと次の母音がつながる | check it out → チェッキラウト |
| 2 | 脱落 | 破裂音が次の子音の前で消える | next day → ネクスデイ |
| 3 | 同化 | 隣り合う音が影響し合って別の音になる | did you → ディジュ |
| 4 | 弱形 | 機能語が曖昧母音になり弱く速くなる | can → クン、for → ファ |
| 5 | 弾音化(フラップ) | 母音に挟まれた t が d/ら行に近づく | water → ワラ、better → ベラ |
| 6 | 声門閉鎖 | t が飲み込まれ、音が途切れる | button → バッ(ン) |
| 7 | 短縮形 | 2語が1語に圧縮される | I would have → アイダヴ |
| 8 | ら行化・l の暗音化 | 語末の l が「ウ」に近づく | milk → ミウク |
| 9 | 音の挿入 | 母音間に軽い渡り音が入る | go on → ゴウォン |
| 10 | 強勢移動 | 文中で強く読む語が変わり、他が潰れる | 内容語だけ立ち、機能語が沈む |
このうち受験生が最も取りこぼすのは 2(脱落)と 4(弱形)です。とくに弱形は、a / of / to / and / can / for / at / but のような超頻出語が対象なので、知らないと文の骨格そのものを見失います。
弱形を知らないと、なぜ全体が崩れるのか
I can go と I can't go を考えてみてください。肯定文の can は弱形で「クン」とほぼ潰れます。逆に否定の can't は強く読まれ、語末の t は脱落して「キャン」と聞こえます。つまり「はっきりキャンと聞こえたら否定」という、直感と逆の判断が必要になります。これを知らずに「キャンと聞こえたから肯定だ」と処理すると、意味が正反対になります。
4週間で音を作る|トレーニングの手順
ルールを知っただけでは聞こえるようになりません。「知識 → 認識 → 自動化」の3段階を通す必要があります。次の順序で進めてください。
| 週 | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1週目 | 10種のルールを頭に入れる。スクリプト付き音源で「どのルールが起きたか」に名前をつける | 1日15分 |
| 2週目 | ディクテーションで書き取り、聞き取れなかった箇所をルール名で分類する | 1日20分 |
| 3週目 | オーバーラッピング(スクリプトを見ながら音声に重ねて音読)で口を作る | 1日20分 |
| 4週目 | シャドーイング(スクリプトなしで追いかける)で自動化する | 1日20分 |
ポイントは2週目のディクテーションを飛ばさないことです。ここで「自分がどのルールで落としているか」を特定しないまま3週目以降に進むと、ただの音真似になって伸びません。やり方はディクテーションの勉強法とシャドーイングのやり方で詳しく解説しています。
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- 大原則「英語は母音の数で聞く」+聞こえない原因の3分類
- 連結・脱落・同化・弱形など音声変化10種の早見表/弱形一覧
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よくある質問
聞き流しをしていれば、そのうち聞こえるようになりますか?
なりません。意味を処理していない音は、脳が雑音として捨てます。聞き流しが効くのは、すでに音のルールを知っていて意味も取れる段階の「維持」用途です。ゼロから作る段階では効果がほとんどありません。
発音できないと聞き取れない、というのは本当ですか?
おおむね本当です。自分が出せる音は聞き分けられます。だからこそ手順の3週目に音読(オーバーラッピング)を挟みます。ただし「ネイティブ並みの発音」は不要で、ルール通りに音を変形できれば十分です。
何週間くらいで変化を感じますか?
個人差はありますが、①のタイプ(スクリプトなら読める人)であれば、2〜4週間で「今のは連結だ」と気づけるようになります。完全に自動化されるまではさらに数ヶ月かかりますが、点数への反映はもっと早く始まります。
共通テストや英検のリスニングにも効きますか?
効きます。むしろ試験対策の土台がここです。試験別の対策は共通テストリスニング対策、英検2級リスニングなどをご覧ください。
まとめ
- 「読めるのに聞こえない」の原因は音声変化のルールを知らないこと。才能ではない
- 英語の音の変形は10種類しかない。名前をつけて覚える
- 大原則は「英語は母音の数で聞く」。カタカナの拍数で待つと聞き逃す
- 取りこぼしが最も多いのは脱落と弱形。とくに弱形は文の骨格に関わる
- 手順は知識→ディクテーション→オーバーラッピング→シャドーイングの4週間
