この記事で分かること(3行サマリ)
- 同じ東大英作文の答案を採点させたところ、ChatGPTは10点、Geminiは11点(16点満点)。一方、イエナアカデミーの添削は4点をつけました。差を生んだのは「設問の中心概念のすり替え」を見抜けるかどうかです。
- 実は、私たちのAIも最初は10点をつけていました。人間の専門家が「そもそも論理構造あってますか?」と検証をかけ、採点基準を3日間で3回上書きした結果が4点です。
- 4点の答案を書いた生徒は、点数を受け取る前に「辞書で設問の語を確認して書き直す」という指導を受け、自力で11点まで伸ばしました。AI添削の価値は、AIの性能ではなく運用する人間で決まります。
「AIが英作文を添削します」というサービスは、今やいくらでもあります。ChatGPTやGeminiに答案を撮って送れば、数秒で点数と講評が返ってくる時代です。
では、その点数は信用できるのでしょうか。
イエナアカデミーの東大英作文添削コースも、AIを使っています。ただし私たちは「AIに採点を任せる」ことはしていません。この記事では、2026年7月に実際にあった生徒とのやり取りをもとに、汎用AIの採点と、人間がチューニングしたAI添削がどれだけ違う結論を出したかを、答案と点数をそのまま公開して検証します。
実験:同じ答案を3つのAIに採点させてみた
課題と答案
課題は東大英語・第2問(A)自由英作文の予想問題です。
2(A) 以下の問いに、60〜80語の英語で答えよ。
What does it mean to be wise?(賢いとはどういうことか)
これに対して、東大志望の受験生・A君(高校生・仮名)が書いた答案がこちらです(原文ママ・約78語)。

I think that to be wise means to be able to create something new. If a man study hard, he will be able to take good scores on examintations. However, this is because almost all of the questions on the test are similar to the ones he has studied. In fact, not every students who go to first-class university can invent something new. In this way, wise people are those who can do something nobody has done.
「賢さとは新しいものを創造できることだ。勉強すれば試験で点は取れるが、それは既視の問題だからにすぎない。一流大学の学生が皆発明できるわけではない。誰もしていないことをできる人こそ賢い」——一読すると、対比構造のある、それらしい答案に見えます。
採点結果は10点・11点・4点に割れた
この同じ答案を、同じ指示(16点満点で採点し、改善点と改善英文を提示)で採点させた結果です。
| 採点者 | 点数(16点満点) | 内容面の評価 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 10点 | 内容4/6。「独自の主張は評価できる」 |
| Gemini | 11点 | 「内容・構成は満点に近い高評価」 |
| イエナのAI(チューニング前) | 10点 | 構成・論理は満点評価 |
| イエナの添削(人間の検証後) | 4点 | 設問適合0点 |
Geminiの講評は、こう始まりました。
素晴らしい答案ですね!東大の自由英作文の核心を突いた、非常に論理的で説得力のある文章です。(中略)出題者が唸るような深い内容になっています。
そして「ケアレスミスをなくすだけで一気に15〜16点の満点圏内を狙える」と結論づけ、指摘したのは三単現のs、everyの語法、コロケーション、冠詞——つまり文法・語彙のミスだけでした。
ChatGPTも同様に10点をつけ、「賢さ=新しいものを創造すること」という主張を「東大らしい発想です」と独自性の面で評価しました。「『知恵』と『創造性』がほぼ同義になっており、説明が十分ではない」と問題の入口には気づいていたのですが、減点は内容6点中2点にとどまり、講評の中心はやはり文法と語法の修正でした。
プロの検証はなぜ「4点」になったのか
設問は「賢さとは何か」。答案は「創造性とは何か」を論じている
イエナアカデミーの添削担当(人間)は、AIの初期採点10点に対してこう問いかけました。
そもそも論理構造あってますか?
再検証の結果、この答案には文法ミスよりはるかに重大な問題が3つあることが分かりました。
- 概念のすり替え——設問は wise(賢明さ・思慮深さ)の意味を聞いているのに、答案は冒頭で「賢さ=新しいものを創造する能力」と定義し、以後ずっと創造性について論じている
- 論理の飛躍——「試験ができる≠賢い」を示しただけで、「賢い=創造できる」はどこでも証明されていない
- 循環論法——冒頭の定義(創造できる人が賢い)と結論(誰もしていないことをできる人が賢い)がほぼ同じ文の言い換えで、論証が前に進んでいない
英語がどれだけ流暢でも、聞かれたことに答えていない答案に内容点はつけられない——これは大学入試の採点では常識です。私たちはこの検証を経て、「設問の中心概念のすり替え=内容(設問適合)0点」というルールを採点基準に明文化し、この答案の評価を4点/16点に確定しました。
ちなみにChatGPTはこの答案を「具体例を書いている」とも評価しましたが、実際には答案中に固有の具体例は一つもありません。試験の話は主張の言い換えであって、事例ではないからです。
白状します。私たちのAIも、最初は10点をつけていました
ここでフェアに書いておくべきことがあります。イエナアカデミーのAIも、チューニング前はこの答案に10点をつけ、構成・論理を満点評価していました。ChatGPTやGeminiと同じ穴に落ちていたのです。
運用を通じて分かったのは、現在のAIには採点者として明確な癖があることです。
- 甘めに採点しがち——生徒を励ます方向に点が寄る
- 構成の「見た目」に引きずられる——主張→理由→結論の型が整っていると、中身の論理が壊れていても高評価をつける
- 語数のカウントが苦手——文字数・語数を正確に数えられないことがある
つまり、AI添削の品質を決めるのは「どのAIを使うか」ではありません。AIの出力を誰が検証し、どんな採点基準を与え、どこで人間が上書きするかです。
3日間で3回、人間がAIにダメ出しした記録
私たちの採点基準は、これまで多くの受講生が受験してきた駿台の東大実戦・河合塾の東大オープンの答案採点実績を積み重ねて確立した、イエナアカデミー独自の基準です。
東京大学は採点基準を公開していません。その前提は予備校各社も同じで、駿台も河合塾もそれぞれ独自の基準をもとに模試の採点を行っています。私たちも同様に、模試で返ってきた採点結果と、合格者の東大の得点開示の感触を照らし合わせる作業を重ねることで、「この答案は本番で何点で戻ってくるか」を自前の基準に落とし込んできました。
ただし、基準は作って終わりではありませんでした。その採点基準を用意してもなお、AIは甘めの採点結果を出してしまいます。運用初日から3日間のあいだに、人間がAIの採点に3回介入しています。
1日目:「今回の採点は甘めです」と生徒に即日訂正。 A君の初回答案(別テーマ・61語)にAIは12点をつけましたが、スタッフが直後に検証し、「大分甘めに設定してあります。冠詞2か所は確実に減点になります」とその場でLINEで補足しました。
2日目:減点の重みを人間が固定。 「厳しめで再採点を」の指示で12点→10点(具体例のない抽象論、末尾の主張反復を減点)。さらに「文法ミスは1箇所につき−2点」というルールを人間が決めてAIに従わせ、8点に確定しました。
3日目:論理構造の検証で10点→4点。 冒頭で紹介した wise の答案です。「そもそも論理構造あってますか?」の一言から概念のすり替えが発覚し、「設問概念のすり替え=内容0点」ルールが確立しました。
この3日間で、採点ルールは次のように変わりました。
| 項目 | 調整前(AI任せ) | 調整後(専門家が確定) |
|---|---|---|
| 全体の水準 | 甘め | 厳しめが基本(本番想定) |
| 文法ミス | −1〜2点の裁量 | 1箇所につき−2点に固定 |
| 設問概念のすり替え | 内容5/6と高評価 | 内容0点 |
| 構成・論理 | 型が整っていれば満点 | 飛躍・循環・水増しを中身まで検査 |
| 具体例のない抽象論 | 減点されにくい | 明確に減点 |
| 語数 | AIがカウントして減点 | 語数による減点はしない(AIの弱点を認めた公平ルール) |
最後の項目は象徴的です。AIは語数カウントが苦手だと分かったので、「AIの採点を信じて減点する」のではなく、生徒に不利益が出ない方向にルール自体を変えました。
4点の添削を、あえてすぐに返さなかった理由
さて、4点になったA君の答案。普通のAI添削サービスなら、点数と修正英文が即座に返信されて終わりです。実際、ChatGPTもGeminiも数秒で「模範解答」を提示してくれました。
私たちは、添削結果を渡しませんでした。代わりにこう伝えました。
添削結果をお渡しする前に、ご自身で wise の意味を辞書で確認して、答案を再作成してみませんか?
A君は辞書で wise を引き、「賢さ=知識を現実の問題解決に使うこと」と設問に正面から答える答案を自力で書き直しました。再採点の結果は11点/16点。設問適合が0→4点、文法が1→4点で、7点の伸びです。
そのうえで、1回目(4点)と2回目(11点)の添削を1通にまとめて返却し、「なぜ7点伸びたのか=設問の中心語の意味を確認してから書いたから」を本人に見えるようにしました。
| 提出 | 点数 | 決め手 |
|---|---|---|
| 1回目(wise・78語) | 4点 | 概念のすり替えで設問適合0点 |
| 書き直し(同・65語) | 11点 | 辞書で設問語を確認→設問に正面から回答 |
ここで冒頭の採点比較に戻ります。Geminiがつけた11点と、書き直し後の11点は、同じ数字でもまったく別物です。前者は「設問に答えていない答案」への甘い点数、後者は「設問に正面から答えた答案」への厳しい基準での点数。本番で意味を持つのは後者だけです。
模範解答を数秒で渡すことは、AIには簡単にできます。しかし「点数を渡す前に辞書を引かせる」という判断は、生徒の学習効果を考える人間からしか出てきませんでした。
「AIだから」を言い訳にしない透明性
このコースでは、添削の限界と前提をすべて生徒に開示しています。
- 東大の採点基準は非公開のため、模試の採点実績をもとにしたイエナアカデミー独自の基準による採点であること
- 専門家が採点基準を設定した上でAIが採点していること・正確性は保証しないこと
- 東京大学および各予備校の関係者は一切関与していないこと
- AIは語数カウントが苦手なため、語数による減点はしないこと
- 返信の最初に生徒の答案をテキストで書き起こして提示すること——AIが答案を読み違えていれば、生徒自身がその場で気づけます
「AIがブラックボックスの中で点数をつける」のではなく、基準も、AIである事実も、AIの弱点も、読み取った答案そのものも、全部見せる。これが私たちの考えるAI添削の最低条件です。
まとめ:AI添削の価値は、AIではなく人間で決まる
- 同じ東大英作文の答案に、ChatGPTは10点、Geminiは11点。どちらも「設問に答えていない」ことを減点の中心に据えられなかった
- イエナアカデミーのAIも最初は10点。人間の専門家が検証し、基準を3回上書きして4点に修正した
- 4点の生徒は、辞書を引いて書き直すという人間の教育的判断を経て、自力で11点に到達した
東大英作文の対策記事は東大英作文の完全ガイドに、今回の答案のような「定義型(What does it mean to be 〜?)」の書き方は定義型の書き方に、よくある減点ポイントは東大英作文でよくある減点ポイントにまとめています。
あなたの答案も、この基準で添削します(無料)
この記事で紹介した「人間がチューニングしたAI添削」は、LINEで答案の写真を送るだけで無料で受けられます。手書きの答案でもかまいません。返却時には答案の書き起こし・観点別の点数・改善案までお付けします。
※採点基準について:東京大学は英作文の採点基準を公開していません。本記事の点数はすべて、受講生が受験した駿台の東大実戦・河合塾の東大オープンの答案採点実績と、合格者の得点開示との照合を積み重ねてイエナアカデミーが独自に設計した基準(16点満点)によるものです。東京大学および各予備校の関係者は本コース・本記事に一切関与していません。
※ChatGPT・Geminiの検証について:2026年7月時点で、同一の答案・同一の指示文を各サービスに与えた際の一例です。モデルのバージョンや指示の仕方によって結果は変わり得るもので、各サービスの優劣を示すものではありません。両者は受験採点専用ではない汎用AIであり、本記事は「専用の基準設計と人間の検証がない採点」との比較を目的としています。ChatGPTはOpenAI社、GeminiはGoogle社の製品です。
※答案の掲載について:生徒の答案は本人の同意のもと、匿名化して掲載しています。
